2016年6月、群馬県の北部にある赤谷(あかや)の森で、1羽のワシの子どもが、生まれてから2ヶ月あまりを過ごした巣から飛び立ちました。このワシは、イヌワシと呼ばれる種。猛禽類のなかでも、いま絶滅が危惧されるとても稀少な鳥です。そもそもは、日本に古くから生息する種であり、人々の暮らしに馴染み深い鳥でしたが、現在は、全国でわずか500羽あまりとされています。彼らが大幅に数を減らした大きな理由は、生息地である森林環境の変化。特に、子育てができないつがいがたくさんいることは深刻な問題です。
赤谷の森では、この6年の間、残念ながら巣立つことができたヒナは1羽もいませんでした。だから、今回の巣立ちは、とても大きな意味があることなのです。
これは単に、その幼いイヌワシの運がよかったからではないと、わたしたちは信じています。赤谷の森では、日本の各地と同じように、植林地が放置されることによって生態系が崩れてしまった森を、本来の姿に戻そうという活動が多方面に渡って行われています。その積み重ねがあってこそ、イヌワシが生まれ、さらに大きく育っていくための環境ができあがったのだと考えています。
このサイトは、1羽のイヌワシの巣立ちをきっかけに誕生しました。森の生態系の頂点に君臨し、“森の王者”とも呼ばれるイヌワシ。絶滅危惧種、そして天然記念物の稀少種であることを抜きにしても、語り尽くすことのできない魅力を持った生きものです。
大空を勇壮に舞うその体の仕組み、森ではどんな暮らしをしているのか、そして、なぜいま個体数が少なくなっているのか……。彼らについて知れば知るほど、自然の営みやそのたくましさ、また私たちの生活とイヌワシがどうかかわっているのか、多くのことを考える機会になると思います。
イヌワシが子育てを行うということは、その森が豊かであり、健全であることの証です。イヌワシが健やかに暮らすことのできる森のことを考える、このサイトがそのきっかけとなりますように。
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2016年10月18日更新